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蔵王不動滝は「不動滝展望台」または日本の滝百選の一つである三階滝を観ることができる「滝見台」から遠望するのみの滝である。しかしながら実際のところ遠望するのみではいい滝なのかどうかはよくわからない。滝壺へと至った人たちのレポートを読むと大絶賛されているのだが、やはり写真を見ただけではよくわからない。どうしても本当にそんなにいい滝なのかなぁ~?という疑念が拭えなかった。実はこの蔵王不動滝には滝壺へと至る遊歩道があったのだが、現在では崩落箇所が何ヵ所もあり、以前のルートは消滅してしまっているので、正規のルートというものがない。このため、この蔵王不動滝の滝壺へ行こうとするならば、道なき道を進んで下流の沢へと降り立ち、そこから沢登りをする必要があるなど、もはや一般的には到達不可能なかなり難易度の高い滝となってしまっている。しかしながら、滝壺から観る蔵王不動滝は全国屈指といっても決して差し支えがない豪快な姿をしていて一瞬で度肝を抜かれてしまった。その落差は54m。滝の横幅は16mである。この「落差と幅」は数字だけをみると際立っているわけではないのだが、特筆すべきはその膨大な水量である。この蔵王不動滝は分岐瀑のようにいつくもの分岐を繰り返しながら、末広がっているものではない。滝の落口から滝壺まで16mという同じ幅を維持しながら落下しているのである。これは前述の通り、その膨大な水量により成し得ているものであるといえ、日本中を探しても類例が他にはないのではないかと思われる豪快な姿にはただただ圧倒されるだけだった。また、滝を取り囲むような形をしている滝の周囲の岩盤も「目の前にそびえ立ち、行く手をさえぎる、立ちふさがる」といった表現がピッタリな実に雄大な絶景となっていて、この滝の景観をより一層引き立てていて最高の空間を演出していた。この日本屈指の豪瀑の真の姿は滝壺へと降り立たないと知ることはできない。展望台や滝見台からの遠望でこの滝のことを語るのは失礼極まりないと思う。何とかもう一度遊歩道を整備してほしいと願ってやまない。